“ポジションの移管 “という手法


取引手数料や各種サービスの違い、サポート体制や対応の姿勢など何らかの理由で、住宅ローンの借り換えや自動車保険のように、”現在の取引先を変更したい” と考える投資家もいるのでは?
しかし、既にいくつかのポジションを保有していて、なかには為替差損が発生しているものもあり、(a) 「損切り(為替差損を確定)」 したくはない、でも (b) 「取引会社を変えたい」とき、他社へ 『ポジションの移管』 という手法があります。
下記では、現在の為替レートは115円で、取引しているX社で保有する 「120円で1万ドルの買いポジション (P) 」を、Y社に移管するシュミレーションをしてみます。
  ① 投資家は、X社で (P) を115円で決済します。 この結果、投資家には5万円の為替
    差損が確定します。
  ② 投資家は、Y社から 「120円で1万ドル」 を新規に買います。 この結果、X社で保有し
    ていたポジションと同等のポジションを、Y社で保有することになります。
  ③ Y社は、ヘッジ先金融機関から現在の為替レートである115円で1万ドルを買います。
    この結果、②で投資家へ120円で1万ドル売った取引が決済され、Y社には5万円の
    為替差益が発生します。
  ④ Y社は、③で得た為替差益5万円を、投資家の取引口座へ調整額(adjusting)として
    反映させます。この結果、投資家は、①で確定した5万円の為替差損が帳消しになり、
    ”X社で (P) を保有していた同様の取引状況に戻った” ことになります。
ここで再確認。 ①~④ の取引の流れは、投資家が、保有するポジションを単にX社からY社に移管する効果を求めたものであり、Y社および投資家に為替差益は発生しません。投資家は、見かけ上④で5万円が調整額として取引口座に反映されたことを “為替差損がなくなった” と錯覚しないことです。この5万円はすぐに引き出すことはできません。 なぜなら、Y社に移管した保有ポジション②を決済する必要があり、決済と同時に①と同様、5万円の為替差損が確定するため手にすることはできません。Y社に移管した保有ポジションには、引き続き “含み損”(為替差損) が存在していることを忘れてはいけません。
さて、賢明な投資家は、わざわざ上記のような取引は行いませんよね。
  (A) X社で (P) を決済することで、為替差損を確定させる。
  (B) Y社で実勢レートである115円で1万ドルを買う。
X社で保有するポジションをいったん清算し、Y社では実勢レートで新たにポジションメイクすれば、継続的に同等なポジション保有の効果をもたらします。
       
為替レートが120円になったとき、①~④の取引で為替損益がゼロになり、もともとのポジション(P)に「損失は発生していない」ことで、投資家は (a)(b) の思いは成し遂げたことにはなります。このことは、自己満足だけにほかなりません。 一方、賢明な投資家が行った(B)では 5万円の為替差益が発生し、結果、(A) で確定していた為替差損を帳消することになります。
「ポジション移管」を望む投資家の性格に注目してみると、ポジションメイクした時点の取引判断に固執する傾向があり、清算の先延ばしで損切りする機会を失いやすく、さらに損失が一方的に拡大してしまう恐れもがあります。
これに対して、為替差損が発生している保有ポジションを一旦清算できる賢明な投資家は、ひと呼吸置くことで、その後の為替動向に柔軟な取引対応ができます。為替トレンドが円高であるとき、(B)で「買う」のではなく 「売る」ポジションメイクに軌道修正できることにもなり、その後の取引に選択肢が広がります。
外国為替証拠金取引では、(1)損切りのタイミングを逃すことなく、(2)冷静に、(3)為替トレンドを見極め、(4)ポジションメイクしたときの判断を見直す、再考も必要ですね。
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【ポジション移管という手法の上記記述は、金融先物取引法、同法施行令、同法規則等その他外国為替証拠金取引等に関する法規に準拠し解釈したものではありません。当該手法を解説したものであり、また当該手法を薦めるものではありません】 Rumina


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